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土方はそっとベンチから立ち上がる。左手は銀時の手を取ったままで右手で銀時の髪に掛かった花びらを軽く払う。それからこう言った。
「…うるせぇ。お前以外にするか、こんなこと。」
その言葉に赤くなりながらも顔を引きつらせる銀時。
「おまっ……マジ恥ずかしい奴だな。聞いてるこっちが鳥肌立つっての。」
だが土方はかまわず銀時をそっと抱き締めた。
突然のことに戸惑う銀時。
「お、おい?ひじ…」
「…黙ってろ。」
そう言って更に強く抱き締める。銀時は暫くじっとしていたがやがて目を閉じて、土方の背中にそっと腕を回した。
暫く抱き合った後、土方はそっと銀時の身体を離した。それから見つめ合う二人。どちらからともなく顔を近付ける。あと数センチで唇が触れ合おうとする瞬間、土方の携帯が鳴った。ぴたりとお互いの動きが止まり顔を見合せる。
「…おーい、鳴ってんぞ?」
銀時にそう言われて仕方なく電話に出る。
『ひーじかーたさーん。旦那といちゃつくのはその辺にしてそろそろ戻って来てくれませんかねぃ』沖田だった。それを聞いた土方が怒声を上げる。
「だーれがいちゃついてるかぁぁぁ!!馬鹿言ってんじゃあねぇよっっ!!」
そう答える土方だが腕には銀時を抱えたままだ。銀時が苦笑する。『そうですかぃ?俺はてっきり今頃は旦那をホテルに連れ込んでるかと思いましたぜ。』
その台詞は電話越しだが銀時にもはっきり聞こえた。土方がかあっと赤くなる。
「ばっ…んなわけあるかあぁぁ!」『あ、まだ旦那とはまだですかぃ?そりゃあ失礼。』
完全に沖田のペースだ。電話の向こうで嘲笑ってる様が浮かぶようだなと銀時は思った。
何度かの押し問答の後、乱暴に電話を切った。
「…タイムオーバーだな。」
銀時がそう言って土方から離れようとした。が、土方が腕を掴んで引き寄せ、再び銀時をしっかりと抱き締めた。
「…お、おいおい土方くん?早く行かなきゃ駄目なんじゃ…。」
「…うるせぇ。わかってる。…もう少しだけだ。」
銀時は小さくため息を付き、困った様に苦笑いした。
「…銀時。……きだ。」
ふと土方が小さくそう呟いた。だが銀時には聞こえなかったらしく聞き返す。
「あ?何か言ったか?」
土方は銀時を抱き締める腕に力を込めた。そして…。
「……好きだ。銀時。」
はっきりそう言った。銀時の顔が赤く染まる。
「な、何だよ急に…。やっぱお前熱あんだろっ…!」
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