きっかけは雨宿り

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その日、土方は一人公園を歩いていた。暫くすると、突然激しい雨が降り出した。慌てて近くにある大きな木の下で雨宿りする。 (…こりゃ暫く止みそうもねぇな)ため息をつき、煙草を取り出して口にくわえて火を点けようとした時…。一人の男がこちらに向かって走って来るのが見えた。その人物を見た土方は煙草を口から落としそうになる。 男は木の下まで来た後、そこに居た土方を見てあからさまに嫌な顔になる。 「…な、何でてめぇがここに居るんだよ!?」 「…ああ?んなの俺の勝手だろうが。…お前こそ何故ここに居る?…万事屋。」 銀髪天然パーマに片方だけ着流した着物…その男、坂田銀時。土方とは相性が合わないらしく、顔を突き合わせてはすぐ喧嘩になっていたが…。いつからか、土方の銀時に対する思いが変わりつつあった。 「俺はその…あれだ…ちょっと気分転換に散歩してたら急に雨降ってきたからここで雨宿りしようかな~と思って走って来たらお前が居たんだよコノヤロー!」 まくし立てる様にそう言ったが土方は特に顔色も変えずにジッと銀時を見ている。銀時が怪訝な表情で土方を見る。 「…なぁ?俺の話聞いてる?」 そう言って土方に顔を近付ける。「………!」 土方は一瞬赤くなって即座に顔を逸らした。 「………?」 銀時は何となくいつもと違う土方に拍子抜けしたのか黙って土方の隣に立った。 相変わらず雨は激しくなる一方で止む気配すらない。 特に会話もなくただただ二人して降っている雨を眺めていた。 どれくらいの時間が経っただろうか。急に銀時が震え出した。 「…何か冷えてきたな…雨降ってるせいか?」 それを聞いた土方が着ていた上着を脱いで銀時の肩にそっと掛けてやる。驚いて土方を見る銀時。 「…おいおい…何の真似ですかぁ?」 土方は答えず黙って煙草を吹かしている。銀時はそんな土方を不思議そうに見る。 「…確かに少し寒いな。」 土方が自分の腕を擦る。 「…ならこれ返す…。」 言って脱ごうとしたがグイッと肩を抱かれる。 「……!」 暫く硬直する銀時。 「…こうすりゃ温い。」 カアッと赤くなる銀時。 「…お前…こういうことは彼女にしてやれよ。」 「そんなもん居ねぇよ…。」 間髪入れず答える土方に意外そうな顔を向ける銀時。そしてまじまじと顔を見つめる。
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