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「…本当に居ないのかぁ?」
明らかに疑いの目を向ける銀時。「…居ねぇったら居ねぇよ。」
顔は真っ直ぐ前に向けたまま答える土方。
「ふ~ん…。」
暫く二人して無言のまま雨を眺めていた。
「あ、そうだ…。」
銀時が何かを思い出したかのように懐をごそごそし始め、中から一枚の封筒を取出した。中身は映画チケットが二枚。
「お前さ、映画行かね?この前仕事の報酬と一緒にくれたんだが…内容がガキ向けでさ…新八も神楽も行かねぇって言うからよ…持て余してたんだわ。」
ヒラヒラとチケットをかざす。
土方が驚いて銀時を見る。
「…お前とか?」
動揺を悟られまいと努めて平静を保ちながら問うが内心はドキドキな土方…。
「別に俺と行くの嫌なら他の奴誘えばいいだろ?ほれ、やるよ。」そう言ってチケットを渡そうとする銀時を制する。
「やっぱいらねぇか?…だよなぁ…こんなガキ向けのなんて…。」引っ込めようとした銀時の手を掴む土方。
ハッとして土方を見る銀時。
「…いいぜ…行っても。」
驚く銀時。
「マジでか。…じゃあお前休みいつ?」
「…明後日だ。」
銀時の顔は見ずに答える。
「なら明後日の朝10時にここで待ち合わせな。それでいいか?」
「…ああ。」
いつの間にか雨も止んでいる。
「お、雨止んだか。あ、これ返すわ…サンキューな。」
上着を返す銀時。
「んじゃ、明後日な。遅れるなよ?」
走り去る銀時。それを見送った後、その場でずるずると座り込む。「…マジでか。」
約束の日。土方は30分も早く待ち合わせに来ていた。そわそわしながら辺りを見回す。まだ人通りもまばらな公園。
「…早く来すぎたか。」
仕方なく近くのベンチに腰を下ろす。
10時を回るが銀時はまだ現れない。
(…遅い…まさかと思うが…担がれたか?)
そんなことを考えてる時向こうから銀時が現れた。
「悪い悪い…遅れた。」
「…お前なぁ…遅れるなって言った本人が遅れてどうすんだ!」
銀時がぽりぽりと頭を掻く。
「…ったく。ほら早く行くぞ?始まっちまう。」
急いで映画館に向かう。
二時間後。映画を見終わった二人は近くのファミレスに来ていた。「ガキ向けにしちゃあ中々面白かったよな。」
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