こんなにも君が愛しい

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深夜のかぶき町歓楽街。土方は一人見回りをしていた。 飲み屋の裏側を歩いているとゴミ箱の横で酔い潰れて眠る男が。 近寄ってその男を見る土方の表情が嫌悪なものに変わった。 「…何でこんなとこで寝てんだコイツは…。」 真っ白な髪に真っ白い着物を着流しているその男は土方もよく知る男…坂田銀時だった。 以前の土方なら捨て置いた相手だったが今は…。 「…おい、起きろ万事屋…。」 傍に座り軽く顔を叩くが微動だにしない。土方はため息をつき銀時を背負って歩きだした。 万事屋事務所前に到着し、玄関を開ける。 「…鍵してねぇのか…無用心だなオイ…。」 そんなことを言いながら中に入りとりあえず銀時をソファーに寝かせる。 土方は向かいのソファーに座り煙草に火を点ける。 暫く眠る銀時を眺めている土方。煙草を吸い終わると立ち上がり銀時の傍に移動する。 そして恐る恐る髪に手を触れる。巷では珍しい銀色に輝く髪。 土方は暫く銀時の髪を弄っていたがやがて視線は…。 無防備で無邪気な寝顔。薄く半開きになっている唇に土方は不覚にも色気を感じてしまう。 (…おいおい…どうした土方十四郎…こんな野郎に…ヤキが回ったか…?) だが気持ちとは裏腹に…頬に手を当て…ゆっくりと顔を近付ける。 (俺は…コイツに何をしようとしてんだ…?) お互いの唇が触れ合いそうになるその時…。 「……う、う…ん…。」 銀時が身動ぎしゆっくりと目を開けた。 「……!」 バッと顔を離す土方。 「……あれぇ?ここ、どこ…?」 銀時が寝呆け眼で上半身を起こして辺りを見回すと隣にいた土方と目が合った。 「…はれ?何で…テメーがここに…?つか、お前がここにいるってこたぁ…ケーサツかここ。」 土方がため息。 「…よく見ろ。お前ン家だ。」 銀時が改めて周りを見て納得。 「…もしかしてお前が俺を?」 銀時が土方を見る。だが土方の視線はどうしても口元にいってしまう…。 (もし…コイツが起きなかったら…俺は…) ボーッとしてる土方に銀時が首を傾げる。 「…おーい?俺の話聞いてる?」 そう言って土方の顔を覗き込む銀時。 土方がハッとして顔を逸らす。 動揺を悟られまいと煙草を取り出し口に加えると火を点けようとする。 「…あれ?点かねぇ…。」
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