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────そして冒頭へ戻る
「さて、何故君がここにいるかだったね。」
神は一口紅茶をすすってから話し始めた。
「簡単に言うと、死んだからなんだけどね。」
………
「…死んだ人間は必ず神様に会うんですか?」
「いいや。会わない人間もいるよ。」
神は楽しそうに話している。
「どんな人間なら会うんですか?」
女は先程の感じとは打って変わって冷静だ。
「天命を全う出来なかった人間だね。」
「……と、言うと?」
「他者に邪魔されて天命よりも早くに死んでしまった人間。そうだな……例えば、君みたいな殺人事件の被害者や交通事故などで死んでしまった人間だよ。」
神はそういって女を見据えた。
「………あ。」
女が突然声をあげた。
「……記憶が安定したかな?」
神は女に向かってそう言いながら妖しげに微笑んだ。
女は、はっきりとあの時のことを思い出していた。
…………
「……思い出しました。」
女ははっきりとそう言った。
「そうか。気分はどう?」
「あまり良くはありませんね。」
───一瞬の沈黙
「それで?何故天命を全うしなかった人間は神様と会うのですか?」
沈黙を破ったのは女だった。
「次の生を与える前に、次はちゃんと天命を全う出来るよう、ちょっとした呪い(まじない)をかける為だよ。」
「……そうですか。それが終わったら、輪廻転生の輪に入るんですか?」
「うん。普通はね。」
神はにっこり笑って言った。
「…………普通は?」
女にとってその言葉は引っ掛かる言葉だった。
「そ。普通は。まぁ、要するに、君は普通にはならない訳なんだよ。」
…………は?
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