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「もしかして……」
木崎さんの漏れる様な小さな震える声が私の心臓を大きく跳ね上げた。
---どうしよう……
パニックに陥りながらも一生懸命、逃げ道を探すが見つかるわけもない。
怖くて彼女と目を合わせられずにいるが、見なくても彼女が私の事を食い入るように見ているということは痛いほど分かった。
私は腹をくくり、とりあえず彼女の方に向き直ろうとしたが
「悪い、待たせたな」
タイミング良くというか悪くというか、ゆーちゃんが私達の異様な雰囲気にも気づくことなく割って入ってきた。
「じゃあ、私はここで……。またね雄一。---幸江ちゃんに会えて良かった」
意味深な言葉を残し木崎さんは、また教室へと入って行ってしまった。
木崎さんのちょっと寂しげな様子を気にしながら、私はゆーちゃんと共に、ゆっくりとその場を離れ帰路に着いた。
これが私と木崎さんの出会いで、すべての始まりだったのかもしれない。
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