第1章

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 私の頭の中はあの世界に戻ることだけに占められ。    父は通常の稽古に出てこない私を咎めることはなかったし、母は深夜まで本を読む私の為に夜食を持ってきてくれた。   「どうしても、私はあの世界に戻りたいんです」   「どんな代償を払うことになってもか?」      静かな楠さんの声。     「どんな代償を払うことになっても、この世界に私の居場所はなくなってしまったんです」   「そうか……。神楽地とは会ったか?」   「え? あ、はい」   「彼はあの世界の者ではない」   「え?」      聞かされた言葉に思考が止まる。    神楽地があの世界の人ではない?  
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