第1章

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「わかった……。次の満月の夜、京都の桂川に飛び込め。新月の向こう側に繋がるから、私が力を発動させる」   「京都の桂川?」   「君が最後にいた場所だよ」      そういえば、神楽地に斬られたのは桂川沿いだったことを思い出す。     「わかった。持ち物は持って行ける?」   「ああ、持ち込めるが、人に見られたらそれだけで運命がどう変わるかわからないことだけは頭に入れて選んでくれ」   「うん」      あの世界に戻れる!    その事実に浮かれて、この時の私は楠さんの様子に気づくことも出来なかったのだ。      力の発動により運命を変えることが、どれほどの代償が必要とするか理解することも出来なかった。     「最後にこれだけは言っておく。もし、死ぬ運命の者を助けたいのなら、助けるのは1人だけにしておけ」   「え?」   「何人も救おうとすれば、即座に排除されてしまうぞ」   「……わかった」      力が使える楠さんの言葉に私は素直にうなづくと、楠さんは静かに微笑んだ。  
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