第1章

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 命をかけた日常を生きていた。    志や義の為に命をかけていた男達がいた。      それなのに、今の私は誰にも傷つけられる心配のない人生を生きている。     「何見てんの? 淡雪」      考え事している時に人の気配を感じ、体が硬直していた私は、友達の声にほっとしてしまう。      ほぼ1年。    自分の命は自分で守る生活をしていた。      いつの間にかそんな生活に慣れてしまったのだろう。    背後や近くに誰かの気配を感じると体がとっさに硬直する。     「ん、いい天気だなぁ~って空を見てただけだよ」   「そうなんだ」      横に立っている友人を見上げる私は、ちゃんと笑えているのだろうか?      当たり前だった日常から、私だけが取り残されている。    慣れ親しんだ生活に苦痛を感じていた。  
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