第1章

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 私に向けられた父の背中。    師範になった父を、ずっと強くてかっこいいと思っていた。      でも、緊迫した世界を生きている人の強さとは違う。      新選組で学んだ剣術は、実践の剣。    鍛錬からして違う。      心を鍛えるはずの剣道を、私は楽しむことが出来なくなっていた。      実践の剣に慣れた私は、以前はどんなふうに竹刀を振ったのか思い出せない。      竹刀を振る時は、いつも一人だ。    父に見られたくなくって、早朝や深夜に道場へ来ていた。      きっと父はそのことについて呼んだんだろう。
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