小さな頃

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彩ちゃんは800M走者だった。 実際に見るとわかるけど、この半端な距離、結構なスピードで走り続けるのよ、これが。 一度、親父に連れられて県大会に行ったことがあった。 彩ちゃんは、部員達の中で一番か二番くらいの有力な選手で、足の速さは正直勝ったことがなかった。 ありゃ前世は肉食獣だわってくらい速い。 でも、すげー綺麗な走り方をするんだ。 親父も言ってた。 走ってるとき、いつもからかい、ケラケラと笑いながらふざけてる彩ちゃんじゃなくなる。 真剣な顔つきで、辺りの空気がピンと張りつめる。 女だけど、かっこいーなって単純に思った。 結果は結局2位で、彩ちゃんは悔しく号泣していた。 でも なんだかそれすらもキラキラして見えた。 俺の 初恋だった。
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