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仲居さんに例のモノを出して貰う時に、部屋を暗くして貰った。
かずさんはビールを注ぐのに、手元が狂ったみたいで溢していた。
(仕返しだ。)
それを見て私が笑って、バツが悪いかずさんから怒られた。
か『はよう、タオルを貸せや。』
な『これをお使い下さい。』
仲居さんがラスター持ってきてくれた。
(例のモノを見ればかずさんは文句を言うだろう。)
部屋が暗い中で拭くのに手間取っているみたいだった。
そんな、かずさんをほっておいて部屋の入り口を見ると、少しだけ光っていた。
(やっと、持ってきてくれたんや。)
かずさんは、まだ、気付かないみたいだ。
少しずつ、その光が部屋の中に入ってきても、気付いてない。
仲居さんがそれをテーブルに置くか、置かない内にやっと気付いて顔を上げた。
か『何や?』
(今日、ずっと、何やばかり言ってる。)
それを、テーブルに置いて貰った。
部屋の中はその光だけしか明かりがない。
仲居さんが、ナイフとお皿とフォークと夕飯についてた、デザートを持って来てくれた。
それの上には「7周年祝い」と、書いてあった。
かずさんは訳がわからないって感じで、目を何度もパチパチさせていた。
(自分達が泊まった旅館も忘れるくらいだから、大切な日も忘れてるよね。)
もう、怒りすら感じなくなっていた。
それの上に書かれた文字の意味は理解出来たみたいだ。
(それだけ、覚えてくれたら良いや。)
光を奏でているロウソクの本数も7本だ。
私の誕生日だからとかや記念日だからとかじゃなく今日は本当に大切な日だから、旅館の人に話して用意をして貰った。
私はかずさんに手紙を渡した。
光の中でお互いの顔と白い封筒だけが浮かび上がっていて、ある意味、怖い。
仲居さんはいつの間にか席を外したみたいだ。
か『これは?』
私『手紙だよ。読んでみて。あっ。でも、先にロウソクを消してね。』
か『お前が消せや。』
私『じゃあ、二人で消す?』
か『わかった。』
かずさんと私が一緒にロウソクに息を吹き掛け、ロウソクの灯火を消したと、同時に電気がついた。
な『また、後で、お下げにきます。』
(まだ、居たんだ。)
仲居さんの声にかなり驚いたけど、かずさんは静かに手紙を読み始めた。
(読み終わった後に何て言うかな?)
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