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美和の所に来た時はまだ、寒かった。
(どんな事があっても時間や季節は勝手に巡るんや。私の傷はまだ、昨日の事の様に癒えてないのに…。)
私はおもむろに煙草に火をつけて吸い始めた。
もう、何ヵ月も吸ってはいなかったのに吸わないと落ち着かなかった。
外の景色はいつもと一緒で人々と車が世話しなく動き回っていた。
太陽が完全に昇るか昇らない内にベランダの窓が開いた。
?『おはようさん。昨日は飲み過ぎたわ。』
(声の感じからして春人三かな?)
?『もう、春やな。横に座って良い?』
私『良いですよ。』
?『有難う。煙草を一本貰える?』
煙草を渡す時に初めて横を振り向いた。
(春人さんや…。)
は『昨日は急にお邪魔してごめんな?気に障ったやろ?もうすぐ、俺らは帰るから。』
私『そんな事ないですよ。楽しかったですよ。』
精一杯の笑顔と精一杯の社交辞令を春人に返した。
は『有難う。』
っと、言って春人は笑った。
(この人は優しく笑う人なんや。)
私は過去にそんな笑顔を見た事があるかもしれないのだけど、忘れてしまっていた。
つい、つい、春人の顔に見とれてしまう。
は『俺の顔に何かついてる?』
私『いいえ。ただ、優しく笑う人なんですね。』
つい、思った事を口にだしてしまった。
は『有難う。俺がこんなに、笑える様になったのは…俺を変えてくるた奴が、いるからだよ。』
そう言うと、春人は春人の過去をゆっくりと話し始めてくれた。
元嫁に沢山、傷付けられて子供に二度と会えなくされて、傷付き、苦しみ、自暴自棄の時に今の彼女と出会い、彼女に支えられて乗り越えて、やっと、笑える様になった事。
沢山の事を話してくれた。
そして、美和が私の事も春人にだけ、少し相談していてくれた事も…。
は『今は傷付き、何もかも見えないかもしれないし、何もかも信じられないかもしれないけど、いつか、必ず俺が彼女に出会った様に自分も誰かに出会うから。時間が癒す事は決してないけど、そいう奴に支えられて、少しずつ受け入れられる様になるから、今はただ、穏やかに時間が過ぎるのを待っていれば良いと思うよ。頑張らなくて良いし頑張れって言う方が、残酷や。充分に頑張ったから、今は休む時や。俺と同じ事を言う奴が出てきたら、そいつを大事にすればいいと思うよ。』
そう言って、笑った
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