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思い切って旅館の窓を開けると、あの時と変わらぬ、爽やかな潮風が部屋の中に入ってきた。
その潮風に辺りながら、涙を流した。
流れきった涙がまだ、流れきってなかったのか?
部屋のドアが開くのにも気付かずに、そっと涙を流し続けた。
後ろから、突然、抱き締められた。
私は訳もわからずにもがいた。
(変質者?)
抱き締められた、腕を噛んだ。
悲鳴に近い声を上げたけど、その腕の力は弱まらずに更に強く抱き締められ、唇を奪われた。
いつもの知っている、唇。
手でそっと涙を拭われ、ギュッと抱き締められた。
私『ごめんなさい。』
泣きながら、声にならない声を押し出して呟いた。
か『俺も悪かった。』
いつもの仲直りの方法。
それでも、今日はいつもより、ずっと、ずっと暖かかった。
仲直りに言葉がいらないと誰かが言ってたけど、その通りだと思った。
腕をそっと離され、かずさんの胸の中に顔を無理矢理、埋めさせられた。
息が出来なかった。
数分、その状態でいると、苦しさのあまり、かずさんをバシバシと叩いた。
かずさんの胸から顔を離されかずさんの顔を見た。
泣いていた。
(うん?)
っと思い、もう一回、かずさんの顔を見たけどやっぱり、泣いていた。
私の前でも滅多に泣かない人が泣いていた。
とりあえず、写メを撮ってみた。
か『じゃかましい。何で撮るんか?』
私『何となく。』
二人共、涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑い合った。
私『化粧が落ちたから、お風呂に行ってくる。』
か『おう。不細工になってこいや。ゆっくり入っておいで。』
そう、言われて、私は大浴場に向かった。
大浴場には誰もおらずにゆっくりと髪を洗い、体を洗い、洗顔をし、露天風呂にも入った。
お風呂から出る時に赤ちゃんを連れた家族とすれ違った。
部屋に戻ると、もう、夕飯の支度が整っていた。
昼ご飯を食べてなかったのをやっと、思い出した。
初めて来た時、変わらずの豪華さ。
ただ、一点違ったのは海老がない事だけ。
今回はかずさんが苦手だから抜いて貰った。
海老という海老は全て私にくれるから、私は海老だけでお腹いっぱいになるからだ。
かずさんの食わず嫌いは他にもあるが今日は美味しそうに食べて、美味しそうにビールを飲んでいる。
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