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ケータイの無い時代、
中学生の僕はある女の子と文通をはじめることになった。
きっかけはし実にありふれていた。
三文小説によくある夕日に照らされた校舎裏というシチュエーションを思い浮かべてほしい。
好きです、と神谷ナオが言った。そして、僕に手紙を差しだしてきたのでとりあえず受けとってみた。
いまだに状況がつかめない。どうしていいか分からず硬直していた僕に見かねたのか、神谷はちょっとだけはにかんで唇を動かす。
「あとで読んでね、新井くん」
そう言って校舎裏の影から夕日に染まるグラウンドへと駆けだしていった。
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