渇望、そして狂愛 -蜂蜜色に溺れて眠れ-

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  「……え…?」 男の瞳が悲しみの色から、驚愕の色へと変化した。 でもそれは一瞬のことで、即座に消え失せ、今は深い闇に満ちている。 「……何故、そんなことを聞く…?」 男が口を開き、絞り出すように告げた。 「わかんねぇけど……気になったんだ…」 俺の心の、奥深く、意識しないとわからないような、そんな奥深くが、確かに、確実に、叫んでる。 悲鳴を上げている。 「…そうか……」 「Σッ…//」 少しの沈黙の後、男は困ったように微笑む その微笑みを見た瞬間、ドクンッと俺の心臓が高鳴った。 何故かはわからない。 だが、全身の血が、沸騰しているのではないかというくらい熱い。 俺はいったいどうしたというのだろうか? 「…君には、まだ話せない。話すべきではない…」 「ぇ?//」 「私の名はロイ・マスタング、由緒ある吸血鬼一族の末裔」 男はソッと壊れ物を扱うかのように俺の頬に触れ優しく口付けをするとベッドから降りた。 「………なッ…/////」 「今は…それだけ………後のことは君が私のコトを思い出してくれたら話すよ…」 そう言った男の瞳には、先程のような悲しみの色はなかった。  
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