渇望、そして狂愛 -朱色に染まり、咲誇れ-

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「ねぇ、なんで俺がシチュー好きなの知ってんの?」 「………さぁ、何故だろうね…」 問詰める俺にロイは少し困ったように笑いながらそう言って誤魔化した。 しかし誤魔化した後に一瞬だけロイの目が何かを懐かしむように細められたことを見逃さなかった俺は、釈然としない。 「ロイ、なんで?」 「…美味しくないか?」 「いや、凄く美味いけど……なんで知ってんの?」 「………何をだね?」 「だから、俺がシチュー好きなコト」 「………」 挙句の果てにだんまりだ。 「…なぁ、ロイ?」 「………君が…言っていたから」 何かを思案するように黙り込んでいたロイがポツリと呟く。 しかし、俺は言った覚えはまるで無い。 「は……?いや、俺言ってねぇだろ?」 「言ったよ…それを聞いて私はシチュー作りの練習をしていたのだからね…」 完璧なまでにかっこいい男がキッチンで黙々とシチュー作りの練習とは…いったいどれくらい面白い光景だろうかとか思いながらも、ロイを見る。 ロイの目がまた懐かしそうに細められた。  
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