331人が本棚に入れています
本棚に追加
深夜1時を回ってからは、決して外に出てはいけない。
光で賑わう街も、その時間に入ると、シンとして、闇に包まれてしまうから。
闇に包まれた街には、闇に住む者達が突如として溢れ出すから。
だから決して外に出てはいけない。
深夜1時
俺は人一人いない街道を一人ポツポツと歩いていた。
間抜けな話だが、公園で本を読んでいた間に、つい、うっかり寝てしまったのだ。
この街には、深夜1時過ぎに外に出ていると闇に連れ去られてしまう、という言い伝えがある。
別に信じちゃいないが、この時間に外にいるということが無かったため、少しだけ、ホントに少ーぉしだけ不安に駆られ、俺は家路を急いだ。
(早く帰らないとアルが心配する………ん?)
家路を急ぐ俺の前方には淡いオレンジ色を放つ電灯と、その光に群がる虫、それから………
「…こんばんは」
長身の男が一人。
夜色のマントを這おったその男の髪と瞳は、夜の闇が溶け込んだかのように黒い。
遠目から見ても酷く整った顔をしていることが窺えた。
「……?アンタ…誰?」
俺は訝し気にその男を見た。
「あぁ、これは失礼…私はロイ・マスタングだ」
「ロイ…マスタング?」
「あぁ、ロイでいい」
「…じゃなくて、アンタ、こんな時間にそんな変な格好して何やってんの?」
「変とは酷いな…コレは我々の間ではきちんとした正装なんだがね」
俺は更に訝し気に男を見る。
男はそんな俺を面白そうに見つめる。
「君こそこんな時間に外に出ては危ないのではないかね?」
「は?」
「言い伝えだよ、『深夜1時過ぎに外に出てはいけない。闇に連れ去られてしまうから』…知ってるだろう?」
「あぁ、知ってるけど、俺その言い伝え信じてないし、だいたい闇に連れ去られるって、どうやって―…「どうやって連れ去られるか…教えてあげようか?」」
「………ぇ?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!