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「じゃあ手始めに右手から…」
「わかりました!お菓子でも何でもあげますから!」
「よろしい。では案内して。」
流さんはさらりと言うと、やっと俺を解放してくれた。
「…で、何でまだ俺はショットガンを突き付けられてるんですかね…?」
「逃げられないようにするため。」
「ああ、左様ですか……」
どうして、神は俺にこのような危機を与えたもうたのか……!
この命の危機から抜け出すべく、俺は必死に頭を働かせる。
どうすればいい……どうすれば……
!!
その時、天啓とでも言うのだろうか、ある作戦が閃く。
これなら……行ける!
俺は、流さんを(ショットガンは突き付けられたままだ)居間まで案内すると、居間に入ってから一番遠くにあるキャビネットを指差す。
「お菓子はあそこに仕舞ってあります。」
「よし!」
俺を疑うことなく、指差したキャビネットに突進していく流さん。
バカめ、かかったな!そのキャビネットに入っているのは皿やコップだけだ!お菓子なんて入ってないんだよ!!
流さんが、キャビネットに突進していく様を横目に、脱兎の如く駆け出し、玄関に向かう。
「ケースケェェー!!」
背筋の凍りつくような、身の毛のよだつような咆哮が、家を揺るがす。
ヤツめ、気がついたか!
しかし、俺が家を出る前に追いつくのは距離的に理論上不可能だ。どう転がっても、俺の勝ちは揺るがない。
とはいえ、グズグズしていれば追いつかれてしまう。事態は一刻を争うのだ。
玄関へ続く廊下にでると、少しでも時間を稼ぐためにドアを閉める。
閉める瞬間、一陣の風が走り抜け、俺の頬を撫でる。
風が流れてきたということは、玄関のドアが開いているということか。どうやら、運も俺の味方をしている様だ。
逃げ切れる、という余裕から生まれる笑みを浮かべながら、玄関の方に目をやる。
そこには―――
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