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「そんな事ないし!」
私の膨れっ面をみた井上さんがフフフ、と笑いながらチラリと視線を移動させる。反射的に私も視線をそちらに向けて、涼介君の顔を見ようとした瞬間に涼介君が一言吐き捨てるように言った。
「帰ろう。」
「え?」
涼介君はカウンターにお金を投げ捨てる様に置くと私の腕を掴んで無理矢理立ち上がらせる。そのせいで膝に置いたバッグが床にガサリと音を立てて落ちた。慌てて腰をかがめてバッグを拾いながら視線を涼介君に向けると不機嫌そうに唇を歪めて私を見つめて仁王立ちしていた。
こんなにも機嫌が悪いのは予想外だ。
とりあえずこれ以上涼介君の神経を逆撫でするのは避けたい。結局最終的に酷い目に遭うのは私なのだから。
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