お・ま・け

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上手く回答しようと思えば思うほど空回りしている気がする。アルコールが入っているのもあってか涙腺が緩くなっているようで、こんな小さな事にも気持ちが落ち込む。 でも、涼介君は私の肩を強引に引き寄せて抱き締めた。 「調子狂う。」 反射的に揺れた私の肩をしっかりと抱いた涼介君は耳元で囁く。 「桃華さんのせいだ。」 「ごめんなさい。」 謝ったのは反射的だったけれど涼介君の声は思ったよりも物柔らかで、私は一瞬涼介君の顔を仰ぎ見て彼の腰にそっと手を回した。 少し空気が柔らかくなった涼介君がふと足を止めて、私の腰を自分の方に引き寄せて抱き締める。 私の顔を見下ろす彼の表情には劇的な変化はないけれど、最近は彼の小さな変化を読み取れるようになってきた。 これは良い兆候。 私を見つめる瞳が何か物言いたげに見えるのは私の思い込みじゃない。
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