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射法八節
矢達「…いきなり、殴り倒すなんて、おかしいですよ!」
起き上がった宗一に駆け寄ろうとするが、宗一自身に対したこと無いと制止された
宗一「むしろ、いつも通りで安心したかな」
赤くなった頬を手で擦る日草、どこかすましたその仕草に、殴った本人は気に入らない様子である
???「殴ったら倒れるぐらい軟弱になったんか」
宗一「倒れるまで殴られた」
???「…まったく、で、お前」
冗談まで言うぐらいなのだ、堪えてはいないのだろう
それよりも矢達にとっては、勢いでおかしいとか言っちゃって、あの先輩がこっちに向かってきたことのほうが大問題であった
???「なかなか骨がある奴やな。見どころはある」
のしのしと歩いて来る彼は、突然矢達の左手を掴むと手のひらを眺め始めた
矢達(…?)
左手を見るだけでなく、親指の付け根あたりを触っている
???「それで、こっちは?」
ポイと、投げ捨てるように離すと、今度は白川と神崎の手を見せるように言った
矢達(手で何が分かるんやろ…)
サッと、左手を差し出す二人、それを見ると満足気に笑みを浮かべた
???「経験者二人か、心強い限り。特に女子、人数が少ないから即戦力として使っていくけんな、もっとも、"テノウチ"を直してからやけども」
神崎「…はい」
二人の手のひらを次々と眺めて当てていく彼が、いったいどうやってやっているのか矢達は気になった
矢達『…どういう仕組みなん?』
神崎に耳打ちをすると、すぐに答えが返ってきた
神崎『タコを見よるんよ、"ツノミ"の辺りとか』
???「別に、コソコソ話さんでもかんまんよ」
じゃあ、遠慮なく…
矢達「…ツノミ?」
神崎「角に見るって書いて角見、純、それと、日草さん、あと…」
嶋村「嶋村遼」
ぶっきらぼうに自分の名前を言う
神崎「嶋村さん、手を見せてください」
皆が手を差し出すので、矢達も何となく差し出す
ズラッと並ぶ五人分の左手
とはいえ、こう並べられても矢達には何が違うかさっぱり分らなかった、分かることといえば彩の指って綺麗だなーぐらいのもの
矢達「…よく分からん」
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