電子手紙

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  ヴー ヴー     物静かな部屋に響く、机を揺らすバイブ音     「………」   私はいつものように日も当たらない部屋で静かに携帯を開く       「クス」       画面を開いて静かに微笑む   私が管理しているリストカット系携帯サイトからの投稿写真だった   真っ赤な首   皮が抉れて皮膚にぺとりと張り付いている画像     (今日は首を切りました 皮がべろんべろんです★)   携帯のボタンを押し、慣れた手付きで返信をする     (すごいですね😌💕 血のついたティッシュとかもありますか?✨✨)       また携帯を閉じる     今は夜中の3時   もうすぐ夜明けだ     私はここ最近、不眠症になやまされている   そのせいで学校の授業には身が入らない     私の名前は木下 侑希(キノシタ ユウキ) 現在高校三年生   中学3年生の頃からリストカットを始め、バンドで歌を歌っている 歌うこととか絵を書くこととか物を作ることが好き そしてヴィジュアル系が好き   外見はおとなしめで黒髪メガネっ子だけど中身はどろどろ   援助交際、リストカット、ODを繰り返していた     「明日は一限から体育か…」   タルいな、と思いながら携帯の時刻を見つめる     登校まではまだまだ遠い     早く     早く外に出たい       ここに居たくない     メールが途絶えたので私はイヤホンを付け爆音でムックを聞いた     どうしても眠れない     家が 部屋が   落ち着かない     夜が 一人が     怖い     早く夜が明ければいいのに     早く朝が来ればいいのに     そう願いながら私は5時まで音楽を聞いて過ごした               漸く夜明けが来た     耳が爆音のせいでジリジリした   ピアスが痒くて耳を軽く引っ張りながら朝日を睨み、顔を洗いに部屋を出た     静かに     静かに蛇口を捻りお湯を待つ   冷水で静かに手早く歯磨きを済ませると静かに手早く顔を洗いはじめた     鼻とおでこ、顎、頬を念入りに洗う     「隈とニキビがふえてきたなぁ…」     汚ならしい自分の顔を睨みながら顔を洗いタオルで乱雑にふいてから化粧水を付け、そっと部屋に戻った      
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