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「おー、清一って格好良い名前じゃねぇか!じゃあ、清一な。コイツは龍成。同い年なんだから堅いの無しにしようぜ。」
「いや、でもコイツは仕事中…石田さんって呼ばないとキレるんすよ。」
「ああ、頭堅いからなー。気にすんな。龍成も別に良いだろ?」
石田は織田さん…信助に弱いのか顔を渋らせるが仕方がなさそうに眉を潜めて頷けば、俺達の前をすっと通り過ぎる。
「行くぞ、清一。冷蔵庫の補充の仕方を教える。」
「え、ああ。それじゃあ…信助、行ってきまーす。」
石田に清一と呼ばれ驚きながらも足を進める石田の後を追いかけながらもチラリと振り向く。信助の方へ視線を向ければいつものように笑みを浮かべて手を振っていた。
「行ってらっしゃーい。」
ああ、何か…信助は癒し系な気がする。見てると心が洗われるな。石田は相変わらずだが、まあ…良い奴そうなのは確かだからなー…。何だかんだでレジ操作とかも丁寧に教えてくれてた気もするしな。
「中に入る前にここで軍手を付けておけ。じゃないと指先を切ったりして大変だから気をつけろよ。」
ほら、といわれで差し出された軍手を受け取り軽くお礼を言えば言われた通りに軍手を付ける。付ければすぐさまぺらぺらと業界用語を話し出す石田の言葉を聞き流す。
「では、中へ入るぞ。」
カチャリと扉が開けば、冷気に包まれた冷蔵庫があるはすだった。
「…おいおい、石田。冷蔵庫の補充じゃなかったのかよ?!」
「そんなの…俺だって知らない!何だと言うんだ、これは…」
目の前には野原が広がっていた。野原だ、野原。俺は取りあえず、前に立っている石田の身体を押しやり元は冷蔵庫の空間の中へと入る。やっぱり野原だ。しかも広い。
「何だよ…ピクニックでもしろってか?取りあえず信助を呼びに行こうぜ…って、あれ?」
後ろを振り向けばさっきまであった筈の扉が無くなっていた。石田もそれに気が付いたらしく顔を青くしている。俺達は冷蔵庫…いや野原に取り残されたのだ。
そしてその野原が只の野原ではなく、彼方ら此方で狼煙が上がっていた。その狼煙の意味に彼等は気が付かず、ただ呆然と立ち尽くすのだった。
狼煙
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