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――――…
藍の頑なな抵抗に、結局は何の治療もしないまま帰路につく。
『良かったな、インフルじゃなくて』
「………瑠一……暑い」
(熱が上がりきったか?)
だったら後は下げるだけ。肩で息をする姿が痛々しい。
いつもなら窓の外ばかり見ている藍だが、今日はシートを倒した助手席でこちらを向いて横になっている。
「………………」
(ん?)
視線を感じて信号待ちで目をやれば、真っ赤な顔の藍が苦しげに此方を見ていた。
『もう直ぐ着くから、…な?』
「…………ん」
そろそろと延びてきた手が、力無く俺の服の裾を握る。
それを解き、直接手を握ってやれば安心したのか両手で包み込んできた。
(苦しいな、藍……直ぐ楽にしてやるからな?)
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