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……………数日後……。
「瑠一、あの薬どこだよ?」
『………あぁ?……何の薬だ』
「…………ケツに入れるやつ」
『解熱剤はさっき飲んだから、いらん』
「ずりぃぞ!!………あれ、後で滅茶苦茶恥ずかしかったんだからな!」
まんまと風邪を染され、ベッドの住人になり果てた俺の枕元に仁王立ちの藍。
自分の薬嫌いの我が儘を棚上げしてこの言い様だ。
『気持ち良いのがオプションに付いてただろうが……良いから其れ食わせろ。』
其れと顎で指したのは、仁王立ちの藍の手にあるフォークに刺さったリンゴ。
所々赤い皮が残る不恰好な姿は、30分もかけて藍が格闘したものだ。
林檎さながらに頬と耳を紅くして、それを口元に寄越しながら得意げに言う。
「こういうの、鬼のカクハンっていうんだろ?」
『撹乱だ。混ぜるな。そして俺は鬼じゃねぇ。』
――― 鬼畜のくせに…
(聞こえてるぞ?)
小さな声だったが、確かに聞こえた言葉に苦笑する。
憎まれ口を叩きながらもそばから離れない藍を引き寄せ、頬にキスをした。
―――免疫はあるからへいきだろ?…
fin
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