鶴の恩返し

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むかぁし、むかし――… それは地上の全てを白く覆うほどの凄まじい吹雪の晩の事―…。 家の戸を乱暴に叩く音で、おっさんは目を覚ましました。 ドンドンッ――… 「開けてくれっ」 ドンドンドンッ――… 「なぁ!ここ開けて!」 (………うるせぇな…) 最初こそ無視しようとしたおっさんでしたが、 呼びかける声の余りの切羽詰まった様子に、 結局根負けして戸を開けてやることにしました。 『こんな夜中に何の用だ?』 「さみぃ!開けるのおせぇんだよ!…凍え死ぬとこだっ」 夜中に人を叩き起こし戸を開けて貰っといて、何て言い草だ―――… おっさんはろくろく訪問者の顔も見ずに、開けたばかりの戸を閉めようとしました。 .
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