鶴の恩返し

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『…………』 「え?!……ちょ、一晩だけっ…吹雪が収まるまででいいからっ」 無言で閉め掛けた戸に、寒さで白くなった手をかけ頼み込んでくる訪問者。 おっさんは溜め息をついて、言いました。 『仕方ねぇな………入れよ。ったく冷てぇ手ぇしやがって…』 「あ、……」 おっさんは、戸にしがみつくように掴まっている訪問者の指先を離し、 氷のように冷え切った手を引いて土間にあげると、ガタガタと音を立てて戸を閉めました。 そうして振り向いたおっさんは、初めて訪問者の顔を目の当たりにしたのです。 .
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