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リリリリリリリリ。
いつも通り惰眠を貪っている朝の事。
鳴り響く電話の音に、僕は目を覚ました。
「――今何時だ?」
感覚的には……五時くらいか。まぁこの感覚は宛にならないだろう。昨日は色々な意味で疲れて何時に寝たのかすら覚えていないし。
リリリリリリリリ。
「分かった分かった……起きるよ……」
無視を決めてやろうかと思ったけど、しつこく騒音を撒き散らす電話に嫌気が差して仕方なく起きる事にする。
掛け布団代わりのタオルケットから抜け出し、ベッドから降りた際に、昨日床に放置したままだった雑誌をふんずけて転ぶ。
臀部に鈍痛。
立ち上がるのに十秒。立ち直るのに三十秒かかった。
部屋から出て、廊下に設えてある黒電話の受話器に手をかける。
……それにしてもこの時代に黒電話っていうのはどうなんだろう。まぁ両親の嗜好だからしかたないんだけど。
実際、僕も両親ももう携帯電話を持ってるし、この黒電話が役に立つのは町内会の連絡網の時くらいだ。
後は振り込め詐欺の電話がたまにかかってくるくらいか。
さて、相手は誰だろう。友達か……この線が一番濃いけど、友達なら携帯に掛けてくる筈。
そもそも僕は僕の安眠を阻害する奴を友と呼ばない……というのは冗談だ。
なら、若しくは先生……まぁ無くはない。けどこんな早朝に掛けてくるだろうか。しかも、連絡網は違う人が回す手はずで、その人は僕の携帯番号を知ってる。
まぁ、考えても仕方無いか。宇宙人が出るわけでもないし、取り敢えず出よう。
「はい、どちら様ですか」
『もしもし。私メリー』
予想の範疇を、越えていた。
「……、メリーさん?」
『そう、私メリー。今この星にいるの』
「へぇ……」
貴方の家の前に居る。とかじゃなかったか?
『長い旅を経てやっとこの星に来たの』
「お前は宇宙人かよ」
まさかの宇宙人だった。僕の無駄な勘が無駄に冴え渡っている。
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