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家族の話をしよう。
最近、両親が既に死んでいるとか離れて暮らしているとかそんな主人公が多いようだが、僕にはそんな特別性は無い。今現在も小さな一戸建てに家族三人で暮らしている。
仲は良い方だろう。まぁ、如月家の内情を知っている僕からすれば、どんな家族も仲良く見えてしまうわけだが。
あぁ、そういえば小さい頃、二年くらいの間家族と離れて暮らさなければならない状況に陥った事もあったか。『あんなこと』があった後も笑顔で迎えてくれた両親には感謝してもしきれない。
詳しく言えばエピソードは尽きないが、今日はこの辺で止めておくとしよう。物語のテンポも悪くなってしまうし。
で、だ。
居間に入ると、親父が優雅にコーヒーを飲みながらエロ本を読んでいた。
「何やってんだあんた!!」
「おぉ、おはよう。よく眠れたか?」
「生憎メリーさんに起こされて眠れなかったよ。というかエロ本を読みながら爽やかな顔をするな!!」
これが残念ながら。いや、残念な僕の父親、安沙祇 良夜だ。
軽く白髪混じり黒髪。ピシッとスーツを着こなす、絵に書いたようなサラリーマンだ。
エロ本を持っていなければの話だが。
「結城。メリーさんっていうのは……あれか?コレか?」
「小指を立てるな。中学生のノリだぞ」
「まぁ固いことを言うな。親子だろ?」
「親子だからこそ言わなければならないことがあるんだよ!! ていうか息子に毎朝こんな事を言わすな!!」
「はっはっは」
必死の抗議も虚しく、父さんは軽やかに笑いながらエロ本のページをめくり続ける。
……そういえば、どんなジャンルを読んでいるのかは確認した事が無かったな。念のために確認しておこう。別に僕が見たい訳じゃないぞ。あくまで父親が犯罪レベルの物を見ていないかの確認の為だからな。
「……」
冷蔵庫に行くフリをしてそっと表紙を見る。
「……何だ結城。父さんを疑ってるのか?」
しまった。失敗してしまった。
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