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閑話休題。父さんの事はひとまず置いておこう。
僕は机に置かれていたリモコンを持つと、チャンネルを回しだす。途中父さんが大きなお友達向けの子供アニメに目を光らせたがそれはスルー。気づかないでいてあげるのが優しさだ。
そして目的の番組にチャンネルを合わせる。ニュース番組だ。
いつからになるかは分からないが、僕はこのニュース番組を毎朝見続けている。連続視聴記録更新中だ。
番組の開始を告げる音楽を聞きながら、僕は椅子に座った。
アナウンサーが読み上げる今日のトップニュースは、昨日と同じだった。
『吸血鬼事件』
始まりは確か……二週間前。最初の被害者である名前も覚えていないその人は……首筋に牙痕を残し、全身の血を吸い付くされて死んでいた。
それから毎日一人ずつ、同じように、全身の血を吸われて、殺された。
吸血鬼に。
……勿論、吸血鬼っていうのはただの比喩だ。漫画なんかに出てくる、ああいう……『吸血鬼』という『種族』なんかじゃ決して無い。
犯人は、ただの人間だ。
運悪く、そういう『能力』を得てしまった、人間。
……とまぁ、ここまでさも本当のように解説してきた知識は、あくまでテレビの受け売りだ。真実かどうかなんて分からない。
けど、多分間違っては居ないと思う。
「連続猟奇殺人か……やれやれ、物騒な世の中になったもんだ」
珍しく真剣味を帯びた父さんの言葉に、僕も……神妙に頷く。
ただ、物騒なのは今に始まった事じゃない。
始まりは十年前で、あの日からきっと……この世界に安全な場所なんてなくなってしまったんだと思う。
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