六限にて

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がばっと顔を持ち上げる。 授業を進行していた先生は黒板にチョークをつけたまま固まっていた。目を凝らせばそのチョークから欠け落ちていく白いかけらまで黒板半ばで止まっている。 俺は周りを見渡す。 「…………ッ!?」 まさに驚天動地とはこのことだろうな、と思う。 ありとあらゆるものが停止していた。 隣の奴のシャーペン。 落とした消しゴムを拾おうと体半分傾けた女子の指先。 大半の生徒の視線が黒板に向けられ、それ以上動いていない……… 「……嘘、だろ?」 俺はとりあえず近くにいた友達の肩を掴み、揺さぶる。 「お、おい!これドッキリ、だろ?あれだろ?皆で打ち合わせして俺ビックリさせようぜみたいな…………な、なあ?…………何で返事しねえんだよ、おい…」 肩を揺さぶる度に体は前後に動くが、ただただ"返事がない"。 あきらめて手を離すと元の体勢には戻らず、揺さぶる途中の体勢で止まっていた。 「なあ!おい!……………先生!先生!」 いくら声を掛けても動かない。誰もだ。 黒板の前からクラス全体を見渡してもやはり皆、同じだった。
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