一つ目―独立の犬―

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ドアを叩く音がする。椅子に座っている男は腕時計を見た。午後1時30分、「…三時間は寝ちまったな…」頭をボリボリと掻きながら、身長200cmはある大きな体が欠伸をする。「失礼します」返事が待てなかったらしい。ドアを開けた青年に男は一言、「おはよーさん」 …ここはムサイ級の艦長室、艦長のエンリケ・ハンター中佐はこの日、新しく配属される兵士を待っていたのだが、いつの間にか寝てしまったらしい。「本日付けで配属されました。アルベルト・フリードリヒ少尉です」見た目からして20代前半であろう。士官学校を上位で卒業しながら、すぐさまここへ配属されるとは、中々不運な男だ…エンリケは彼のデータを見ながらそう思った。「ご苦労、フリードリヒ少尉。後40分程でミーティングを始める。それまでは…」エンリケはそう言うと、通信で誰かを呼んだ。すぐにドアがノックされる。「入れ」入って来たのは20代後半の一人の女性。彼女はアルベルトと目が合うと、少し微笑んだ。「ミーティングの前に紹介しよう。彼女はパトリシア・ブラウン曹長。曹長、少尉を案内してあげてくれ」ブラウンはエンリケに敬礼をすると、アルベルトに「ついて来てください」と言った。部屋から出ていく二人を見ながらエンリケはまた、艦長の証である帽子を深く被り眠りはじめた。
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