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この戦いは人間側の敗走という扱いになるが、魔側の本陣はこの様に命じていた。
落下物を包囲しておけと。
魔の側の長は、人間側への追撃の兵を繰り出しつつ落下物へと向かう。
その途中、近くに控えていた初老の男性が長に問いかけた。
「陛下、我等の新兵器というのは……」
「ーーーー勿論、嘘だ。しかし、神国側のものでも無いのは明らかだ。誰も対応が出来ていなかったからな。
これしきの事で退いたのは予想外だったが……まあ良しとしよう。追撃の兵には深追いするなと伝えてある。」
「さようで御座いますか。」
我が主の慧眼に舌を巻く。
「さて、見えてきたぞ。気を引き締めろ。」
「御意」
落下物を囲うように、魔の者達がいる。そこで目を引いたのは魔の者達の驚きに溢れた様子であった。
長は僅かに違和感を感じ、落下物へと近づいていく。
囲っていた者達が、長に気づき道を開けるとそこには
「これは……布?」
四角い物体は布団で、そこにすやすやと眠っている1人の青年を見つけた。
それは奇怪な光景であった。血に汚れた戦場のど真ん中、 そこに余りにも場違いな日常の1ページがあったからだ。
「ーーーー連れて行け。全ては城で判断を下す。」
魔の王は不確定要素の青年を見つめ、配下達に撤退を命じた。
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