濡れた迷子

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細長く伸びるシルエットは美しく、黒一色のファッションは怪しく、目深帽子からやっと捉えた顔は…無表情。 おまけに、今夜の豪雪のせいだろう、帽子と肩に積もった雪。 はっきり言って……思いっきり怪しい出で立ち。 思わず悲鳴を上げそうになったが、何とか堪えて呼吸を整えた。 「ぃがっ……いらっしゃいませ」 ビビってるから、言い慣れた筈の一言を噛んでも仕方ない、うん。 男性の出方を窺っていると、ハンチングの鍔下から、鋭い眼光を私に向けているのが僅かに見えた。 煙草を挟む指に、自然と力がこもる。 ……こえぇよ。
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