椿の日常

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小窓から外を覗けば、辺り一面が白く染まっていた。 儚く脆い細雪から大粒の牡丹雪に変わり、あっという間に積もった雪は、繁華街の光を反射して宝石のように煌めく。 夜空には雪雲が立ち込めていて、仄かに橙色を帯びていた。 子供の頃、今夜の空模様に似た夜空を見る度に興奮して眠れなかった。 なぜ夜なのに明るいのか?って不思議に思ったりもして、ワクワクしていた。 赤い夕焼け空も好きで、真っ黒な夜空も好きだけど、今夜の不確かな空色が一番好きなのは、幼少期に味わった高揚感のせい。
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