Likon : 未熟なる世界

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たった一つの世界――そんな言葉は只の虚構にしか過ぎない。世界は一つなどではない。多種多様な世界が同時に存在しているのである。 例えば平行世界論。世界は互いに干渉しない複数の世界が並んでいるという理論だ。分岐世界論という、様々な事象に対する可能性で一つの世界が複数に分化するという理論もある。 そもそも人間の世界自体が個々人の認識の違いによって、平行はおろか、垂直や捩れといった諸々の位置に揃うものなのだという考え方だって出来るのである。ホモ・サピエンスだけを人間とするだけでも世界は数多同時に存在していると言えるのであるならば、それ以外の生命が感じ取る世界というものも、また数限りなく存在していると言えやしないだろうか。 しかしながら、そんなニンゲンという言葉が、果たして必ずしもホモ・サピエンスだけを指し示す一義的なものなのであろうか。 地球上にもかつてはホモ・ネアンデルターレンシスやアウストラロピテクスといった別種の人間が存在したのである。それが太陽系外の世界であれば、非霊長類のニンゲンがいてもおかしくはない。事によると数種の人類が同時に存在する世界があるかもしれない。 そんな世界の一つ。ここには我々ホモ・サピエンスと同属の人類は存在しない。姿形の似る者こそいるが、その頃は大半が所謂亜人が多数を占めていたと言える。その種数、大きく見ても実に十二種族に上るものである。 これは、そんな十二種族のニンゲン達と、彼等の暮らす世界に紛れ込んでしまった人間達の織り成す物語。
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