お化け屋敷で その1

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お化け屋敷で その1

  いまだに彼の名前がわからないので、私は彼をオダギリと呼ぶ事にする もちろん心の中でだ 「一台空いたみたいだから三木君はお客様と一緒について来てくれ」 センムとオダギリが乗るのは2シーターのスポーツカー これはオダギリの車だろう どうやらなかなか小金持ちのようだ 不動産屋のある駅前から街道を抜け、五分くらい走ると いかにも郊外らしい開けた景色に変わる 物件は駅から徒歩10分程度の場所だけど、商店街の奥の坂の中ほどにあるという それで車は街を中心にして、ぐるっと回り込むように向かってるようだ 「あ、もうすぐよ」 やがて商店街が見え、その中を車はゆっくりと進む コンビニと郵便局が見える 道の先には大手スーパーの看板も見える どうやら立地条件は悪くないようだ タバコ屋の角を左折すると、次第に緩やかな登り坂へとなっていく 坂の上から帰宅中の子供達が歩いて来る 高台に小学校があるのだろう 車は坂の中腹でウインカーを鳴らし路肩へ止まった 「ついたよ」 緩い坂の途中にその家はあった 背丈程はある緑の垣根でここからはよく見えないが、確かに白い壁に赤い屋根 やはり西洋風だ どうやら入り口はもう少し坂の下の方にあるようだ 先に着いていたセンムが曲がり角でこっちだと手を上げる  
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