【そのようなもの】 

1/9
前へ
/112ページ
次へ

【そのようなもの】 

  5月8日 午後 (株)行きつけ不動産 店内 ここはある地方都市の駅前不動産 私がこの店に通い始めてから今日で2週間 休日や仕事の帰りに少し寄っては部屋を探し続けている 最初のうちは少し緊張していたけれど 今では店にもけっこう慣れて 落ち着いて部屋探しを続けている 担当のミキちゃんともすっかり仲良くなって 今度の休みには噂のスイーツの店に食べに行く約束までしている その日も 私は案内された物件から戻り、間取り図などを見ながらお茶を頂いていた ふと顔を上げると 事務所の奥の扉から男の人が出てくるのが見えた 歳はわたしより少し上だろうか ボサボサの髪にビョウの付いた赤いシャツ 程よく破れたスキニージーンズ 白いウエスタンブーツ チャラい、というよりはヘビメタとロックバンドの中間のような どっちつかずの中途半端な格好 顔つきは無精ヒゲを生やしたオダギリジョーを連想させるいわゆる汚カッコイイ系だ 客? 私がそう感じたのは不動産屋にしてはかなりラフな格好だからだ でも、なぜ私と同じお客さんが、事務所の奥にいるのだろうか 休みの従業員? でも、それにしてはボサボサの髪に無精ヒゲ とてもお店の人とは思えな…! 瞬間、彼と目線がピタリと合った  
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加