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「あなたの探知魔術の範囲は本当に桁外れだな」
「私を誰だと思っている?魔術学園、学長代行だぞ?」
全く説明していないのに妙な説得力を持った言葉だと思う。
シンシア・マルガレーテ・アルネレーヴェ。
神立アンサース魔術学園学長代行にして、ヴァルプルギスの夜の1人。
人類最強にして最凶の存在とも畏敬される存在が、見た目はこんなにちんちくりんの少女などと誰が想像出来ようか。
命の恩人とも言える存在だが、なんでこんなにちんちくりんなのか訊いたことはない。
「さて……アンリ、ついにお出ましだ」
「順調に突破された、ってことかな。まぁ、戦力不足もあるか」
ガツンガツンと屋根を叩く音。
シンシアはいつの間にか、黒いマントを羽織っている。
結局、自分で戦う気満々なんじゃねぇか……
「しかし2匹共逃がすとは、守衛団め……なにをしている?私がいなかったら、どうなっていたやら……」
意識を強く、五感を研ぎ澄ます。
いや、厳密には聴覚と視覚のみだが。
ポケットに突っ込んでいる扇子を軽く握る。
黒い獣の姿が屋根の上をちらつく。
大きな足が屋根をバタバタと鳴らして、喧しい重奏を掻き鳴らす。
「仕方ない……右の一匹は私がブチ殺す。左のもう一匹を殺れ」
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