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「私のデカい銃は主とやらからパクってきたもんさ……」
ガブリ、ブチリ、グチャリ、ガチュガチュ、グコリ……
魔食みの肉音をバックに屋根に腰を下ろして、見た目だけの少女は無邪気に歌う。
「確かなもんなんてどこにあんのさ?確かなのはアンタに逢った今くらいさ」
無邪気にブーツを履いた足をプラプラと振りながら座り込んで歌っているが、その歌は彼女の繊細な歌声にそぐわないほど過激で粗暴だ。
「私はアンタの天使のつもりさ。このままあの世まで道連れにしたいほどさっ!ふふ~ん、ふ~ん、ふふ~ん、ふ~ん……」
シンシアは割と上機嫌だった。
今、そこで胴体のない狗が食い散らかしている化け物はほんのさっきまで果敢に彼女に牙を向けていたのだから。
好戦的な彼女にしたら、挑みかかってくる敵はどれだけ貧弱だろうが貴重なのだ。
人魔問わず、彼女の脅威を察して逃げる者のほうが遥かに多いのだから。
「全部お前のせいさ。殺して死なねぇ化け物なんていねぇのさ。地獄の豚共の言う幻なんて全部嘘さ。いっぺん死んで出直してきな、あの世への片道切符ならあたしが大盤振る舞いしてやらぁ!っと」
ゴポリと音を立てて、袖口から彼女の広げた手のひらに白い珠が転がる。
シンシアはますます気をよくしたのか、歌声にも熱が入る。
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