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「ふぅ……あぶなっ……」
彼女の身体を抱え直して、彼女の傷を見る。
気を失っているのか、さっきのどこか攻撃的な感じは見受けられない。
分厚く、耐魔術処理されているデニム生地で作られたコートを貫いて切り傷や擦り傷が彼女の身体にいくつもある。
よほどの威力じゃなきゃこんなにあっさりこの生地が魔術でぶち抜かれることはないハズだ。
そんなことが可能な人物で心当たりは1人しかいない。
「むっ……アンリか」
バサバサとローブ越しに真っ黒な羽根を羽ばたかせながら、シンシアは僕の隣に降りてくる。
「シンシア、守衛団との衝突は……」
「言うな言うな。突っ掛かってきたのはそこのトリガーハッピーだ」
持っていた槍も羽ばたいていた翼も被っていたローブもまとめて夜風に流れて霧散していく。
「まぁ、何はともあれ化け物共は全部ブチ殺した。あとは任せたぞ」
封印処置された白魔核を僕に渡してから、シンシアはさっさと屋根を飛び越えながら走って帰ってしまう。
とりあえず僕は簡易的な治癒魔術を彼女に掛けてから彼女を背負い、彼女を背負って歩ける程度の身体強化を自分に掛け、屋根を降りる。
「もう夜中だが……守衛団の宿舎までは僕も持たないか」
それに傷だらけの気を失った彼女を連れていったら、大変なことになりそうだ……
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