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「こんな月夜は化け物共もはしゃぎそうだ。さぁ、冷えるし帰ろう」
「うん」
静かな月夜の下、僕達は割と早足に歩いて宿舎に辿り着いた頃だ。
半鐘の音が遠くに鳴る。
化け物が結界を越えて、都市内部に入り込んだ時に鳴る半鐘だ……
「2週間ぶりか、結界を越えてきた化け物は……」
「お兄ちゃん、大丈夫だよね?」
エミは怯えた顔で僕にすがり付く。
僕はそんなエミの頭をぽんぽんと叩いてから撫でる。
「大丈夫だよ、エミ」
「そう、だよね……ごめんなさい、まだ怖いの……」
やはり安心出来ないのか、エミは僕から離れない。
あの日のトラウマが未だに拭い去れないのだろう。
僕はと言えば、もうあの日で恐怖も含む全てを無くした気がする。
「部屋に入ろう。ここだと却って危ないよ」
「……うん」
ようやく震えが止まったエミと宿舎の中へと入る。
もう人がいないと思っていたロビーに真っ黒なセーラー服姿の一人の少女がソファーにふんぞり返っていた。
いや、正確に言うならば……
「遅いぞ、グズが。そこの腐れ妹と外で乳繰り合ってたか?全く、この私を待たすとはいい度胸じゃないか。まるごと消滅するか?」
外見年齢詐称20年セーラー服ドS暴言赤黒髪サイドテール野獣ババァ先生が正解だったか。
「アルネレーヴェ女史、そもそもお呼び立てしていませんが?」
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