1.『Red fraction』

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「式典や公式の場所以外で私のことをファミリーネームで呼ぶな。そのファミリーネームに意味はないのだからな」 「はいはい、シンシア。それで、こんなところに来たのはさっきから鳴ってる半鐘絡みで?」 「察しがいいじゃないか。結界を越えた化け物は2体、面倒なことに守衛団は結界外遠征の真っ最中でまともな戦力はトリガーハッピー娘くらいしかいない」 シンシアはソファーにふんぞり返っていた身体を起こす。 なんかいきなり、小さくなって見えたのは気のせいではないと思う。 「恐らく残りの雑兵共じゃ手に余るだろうし、わざわざ魔術都市に奴等を放置する理由もない」 「それで、貴族の魔術師では守衛団と衝突しかねないから当たり障りの少ないだろう平民出身のお兄ちゃんを魔物退治に引っ張り出そう、って言うの?ミス・マルガレーテ」 エミの冷たい言葉にシンシアは少しだけ目元をキツくする。 「エミ・タンザナイト、貴様に私の名を呼ぶ権利を与えたつもりはないぞ……ブチ殺されたいか?」 「私をどう罵倒しようが構わないけれど、兄をグズだのなんだのと罵倒するのは神だろうが許さない」 お互いにお互いを憎々しげに見ている。 やばい、凄く居心地が悪い。 なんでこの二人はこうも仲が悪いのだろう……
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