1.『Red fraction』

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「エミ、そう誰にでも噛みつくのはやめろ。シンシア、あなたもいい大人が煽らない」 とりあえず二人の間に割り込んで制止する。 いつもながら犬猿の仲というのは見ていても疲れる。 「ごめんなさい」 僕の制止ですぐに普段のエミに戻る。 エミは妙なところで意固地になるというか、どこか振り切れる部分がある。 「まぁ、いい。アンリ、一仕事してもらうぞ?」 「シンシア、それは学長代行としての命令?個人的な依頼?」 「代行命令だと動きにくかろう?」 シンシアは肩にかかっていた髪を手でバッと払いながら、ソファーから立ち上がる。 黒と赤が入り交じる長い髪は一瞬だけ宙を舞い、物理法則に従って彼女の肩を覆っていく。 身振り手振りの全てが風を起こしているような錯覚すら感じるほど、威圧的な存在感が放たれている。 一応、見た目はつり目でちっちゃい少女なのだが…… 「それもそうだ……エミ、先に部屋で寝ていなさい」 「…………はい、お兄ちゃん」 悔しげにしながら、エミは頷く。 下げた頭を撫でてから、僕はシンシアと一緒に宿舎を出て夜の町並みへと歩き出した。 「化け物は今、エリア‐ミネルヴァからこちらに向かって来ている。一匹はトリガーハッピーが向かったようだが、もう一匹は追跡がいるだけで実質ノーマークだな……」
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