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私は罪悪感で一杯になりながらも、精一杯明るく振る舞おうと話題を変えた。
「何食べにいくの?」
「そうだな、じゃあこの店出ようか」
そう言うと拓也は私を連れ、店をあとにした。
そのあと拓也は私に気を使ったのか、この前2人でテレビを見て、その時に私が行きたいと言っていた有名なレストランに連れて行ってくれた。
とびきりの料理に、とびきりのワイン、目の前には拓也、もっと別の日に来ていれば最高の1日になっていただろう。だが美味しいはずの料理やワインも、複雑な気持ちのせいか、この日は味がよく解らなかった。
食事を終え近くのバーで時間を過ごしていると拓也が言った。
「そろそろ帰ろうか」
「え!?」
私は時計を見ながら答えた。
「帰るって…もう終電行っちゃったよ」
「タクシーがあるじゃん、なんだか今日は疲れたからさぁ、帰ってゆっくり休もう」
そして私と拓也はバーを出た。
拓也と過ごす初めての週末。そう考えると逆に雅史を失ったという実感からか、寂しさが急に私を襲った。
心にポッカリと大きな穴が空いたような気がした。
虚しかった。
私は複雑な気持ちのまま拓也に手を引かれ、とぼとぼ歩いていた。
……何でこんな気持ちになるの?どうしたらいいんだろう…
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