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「うーん…会うのはいいけど会ってどうするんだよ、一緒に住んでますっていえばいいの」
「うん」
「うんって……どうなってもしらないよ、本当に考え直した方がいいって……」
拓也はまだそんな事を言っている。こういう時の覚悟は、女の方が上なのかもしれない。だが結婚がそこまで迫っているこの状況なら、拓也のような考えが大人と言われる普通の考えなのだろうか?ドラマの見すぎ?そうかもしれない。
でも私はこの時、誰にどう言われようが、けなされようが、自分の気持ちに嘘を付いてまで結婚したくはなかった。別に大人になんかならなくてもいいと思った。
歳を重ねていくにつれ、本当の気持ちも言えず、自分の気持ちに嘘を付いて自分をごまかして生きていく事がだんだん上手くなり多くなった。
自分に嘘をつき続ける、そうやって生きていく大人の世界。
ただ、この時の私は素直だった。
ただ拓也を愛してる。
正直な気持ちだった。
大人になるのは無理だった……
「だから私はもう結婚したくないの、拓也の事が好きなんだからしょうがないじゃない」
「…解ったよ」
私と拓也は見つめ合うと静かに唇を重ね、そのままゆっくり倒れこんだ。
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