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「はぁ~あ」
「いい加減にせい!」
溜息をついているりんに苛立ちを覚えた邪見は、ついに怒鳴り散らしてしまった。
「あ、ごめんなさい邪見さま…はぁ~」
謝りつつもどこか上の空でまた溜息をつく始末。最近のりんは上の空で何か考えてはふ~とかはぁ~とか溜息ばかりついている。その様子に最初はどうしたのかと聞いていた邪見だったが、特に何かあるわけでもないらく、何でもないと言われる。
少女から徐々に大人となっていくりんにも、考え事があるのだろうと聞くのはやめたわけだが、こうも何度もため息ばかりつかれるとこちらまでため息をつきたくなるもの。
「まったく。なんなんだお前は!悩みごとかなにかか?」
怒鳴りながらも、さりげなく聞いてくれる邪見が嬉しくて、
「あのね…」
殺生丸に聞かれたくないのかこそこそと耳打ちをした。
それに殺生丸は気配で気づいていたが特に何も言わず歩み続けている。
そして
「そ、そんなもの!あたりまえじゃ!」
邪見の大きな声に殺生丸は振り向いた。邪見の隣にいたりんはぷぅっと頬をふくらませてそっぽを向いている。
「やっぱり邪見さまなんかに言うんじゃなかった!」
「全く恐れ多い!そんなこと殺生丸さまがするわけなかろう!」
自分の名が出てきたことに邪見を見る。
それに気づいたのか邪見は殺生丸のもとへ行き
「も、申し訳ありません!りんが殺生丸様に抱っこを昔はしてもらっていたが、今はしてくれないから悩んでいるなどで溜息をついていたなんて…無礼にもほどが…」
殺生丸にすべて聞き入られていると思っていた邪見は、素直に土下座をしながら殺生丸に謝っていた。殺生丸は邪見を通り過ぎ、りんの目の前までゆく。
「あ、う…」
怒られると思い、顔を伏せたりんだったがふわりと体が宙に浮き
「え?」
ひょいっと、殺生丸に抱きかかえられた。
その行為に邪見は唖然と見ることしかできず、りんはびっくりしながら殺生丸のなかであたふたしていた。
「せ、殺生丸さま!あの…りん重くない?」
「重くなどない」
「腕疲れない?」
「…嫌なら降ろしても構わん」
「ダメ!」
ギュッと抱きしめ返しながら降ろされるのを拒否するりん。それを見た殺生丸は
「ならばそのままでいろ」
と歩き始めた。
りんは嬉しそうに殺生丸に抱きつきにっこりと笑った。
りんの溜息はなくなり、鼻歌に変わった。
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