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昼下がり。自室で今日一日、書物を読んでいた奈落は、読み終えたのか書物を閉じた。
読み終えたとたんに何かおかしいことに気づいた。
城内がやたらと静かなのだ。
いつもは、かごめが城の中を歩きまわっていたり、挙句の果てには迷子になり騒ぎになっていたり、外で琥珀どもと遊んでいる声など。最近は静かになることはなかったのだが。
たまにやっている『ベンキョウ』というものをしているのだろうか?
「……」
かごめがここへ来る前は特に思わなかったが、静かすぎるのも気味が悪いものだな…。
だいたい、朝もここへは来ていない。
いつもなら、朝は必ずわしの部屋に来て挨拶をしていくのだが、今日は見ていない。
読書をしていたからあまり気にはしなかったのだが…。
少し様子を見に行くか。
気配では、城の外からは出ていない。おそらく部屋にいるか、城内にいるのだろう。
ひとまず、かごめの部屋へと向かう。
「かごめ?」
部屋に向かう前にちょこんと部屋の前の縁側にいたかごめ。
季節は冬。それなのに薄着で何も羽織らず、両膝を抱え、頭を伏せていた。
「かごめ?」
気づいていないのかもう一度呼ぶが反応はない。
心配になりそばに寄ると、寝息を立てて寝ているではないか。
「かごめ!こんなところで寝ていると風邪をひく!」
今度は少し大きな声で呼びかけると、ゆっくり頭を持ち上げるかごめ。
「ん…な…らく?」
寝ぼけているのかぼんやりした顔でわしを見る。顔を見ると真っ赤である。
「貴様、顔が真っ赤だぞ!!」
おでこに手を当てると普通の体温でないことがわかる。
すぐさまかごめを抱き上げ部屋に連れて行った。
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