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「ん…?」
気がついたのか、かごめは目を覚ました。
あれからかごめはぐっすりと寝入ってしまっていたのだ。
「な…らく?」
ゆっくりと起きだし、半分ぼやけている頭と視界を抑えながら、周りを見渡す。
ここの城の主がいないのだ。
いないことがわかり、布団から抜け出して部屋を出て行く。
隣の部屋にいるのだろうか。
そう思って奈落の部屋を開けてみるがそこにも求める人はいなかった。
仕方なく壁に体を預けながらもゆっくりと廊下を歩いていると
「かごめ!!」
声がした方を見てみるが、ぼんやりとした空間では誰だかわからないかごめ。しかし、だんだん近づいてくるその人は、自分が求めていた人だとわかる。
「…なら…く」
ガバッ!
ふらふらの状態でいるかごめを抱きかかえた。そして言うまでもなく部屋へと連れて行かれたのだった。
「貴様、悪化させたいのか!?出歩いたりなどと…!」
布団に寝かせ、濡れた布を額に乗せてやりながら、怒った口調で言った。
「ご、ごめんなさい」
素直に謝るかごめ。
まだ怒っているのか口調は変わらない。
「どうして出歩いていたのだ。自分が体調悪いことぐらいわかっていただろう」
「だって、奈落が…いなかったんだもん…。それで探しに…」
そう言ったかごめはさみしそうに奈落を見た。
奈落は何も言えぬまま、かごめを見ていた。
「ごめんなさい…」
怒らせてしまったのかとおもい再び謝罪を述べる。
奈落はフッと笑うとかごめの頭を撫でた。
「それは、わしが悪かったな。すまぬ。そろそろ起きるだろうと思って薬を持ってこようと部屋を離れたのだ」
それまではずっとそばにいたと奈落は告げる。それを聞いたかごめは嬉しそうに微笑んだ。
「しかし、どうして縁側にいたのだ。しかも薄着で、なにも羽織らずに」
かごめが風邪をひいた原因を聞く奈落。
渋々かごめは言った。
「今日はなんだか、体が熱くてね?しかもだるいし。起きた時からそうだったの。で、部屋から出たらなんだか涼しいから、あそこで涼んでたら寝ちゃって…」
そしてそこにやってきたのが奈落だったと。
わしが気づかなかったら今頃どうなっていたのだ!
弱々しく笑っているかごめに呆れて溜息を洩らす。
まったくこの娘は、世話の焼ける。
「かごめとりあえず薬を飲んで寝ろ。今水を持ってくるから…」
待っていろという前に、かごめが奈落の着物の裾を引っ張った。
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